「患者様とのお別れ」

- update更新日 : 2024年06月12日
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「患者様とのお別れ」

私は平成18年まで都内の総合病院に勤務しており勤務終了後は鍼灸、整体、運動療法での往診を行っておりました。

当時、患者様にK君という小学生がおり、彼の死に大きな衝撃を受け現在に至っております。

K君を初めて診させていただいたのは彼が小学校2年生の時で幼稚園の頃に筋ジストロフィーが確認され、骨変形、関節の拘縮、著明な筋力の低下で車椅子の生活を送っておりました。

親御様からは病状の進行が少しでも遅れてくれればとの期待でした。
私が、やれるところまで、やってみますとの事で治療を開始させて頂き約3年間診させていただきました。

K君が亡くなった後に親御様からお聞きした話ですが治療開始当初は「やだ、やりたくない」と言っていたそうです。
数週間後に親御様があらためて「K、いやならやめる?」と聞いたところ「体が硬くなるのは、やだ!先生とお話ができるからやる」と言ってくれたそうです。

生前、彼は定期的に筋ジストロフィーの専門医に診察を受けていて「背骨が曲がっていないし筋力の低下や萎縮、関節の拘縮があまり進行していない」と不思議がられたそうです。

小学5年生のある日、誤飲性肺炎をおこし某大学病院に入院しましたが治療の甲斐もなく永眠されました。

K君の葬儀の席で親御様から、「Kも楽しみにしていた治療が受けられなくなりましたが、今までありがとうございました」と感謝のお言葉を頂戴いたしました。

このようなケースでないにしろ患者様、御家族の立場に立ち、心・身体・共に納得していただく治療を目指していこうという意志で現在の自分がおります。

・・東京へ行く際は、K君の墓前に手を合わせに行っております・・。

※筋ジストロフィー
未だに根本的に治療法が確立していない染色体の難病。
主な症状)進行性の筋力の低下、筋の萎縮。